ロストワックス鋳造(精密鋳造)は、複雑な形状を高精度に一体成形できる工法です。
産業機械・自動車・医療機器・エネルギー関連など幅広い分野で活用されており、金属部品の軽量化やコスト削減、高精度化に欠かせない技術となっています。
本記事では、日本国内で高い技術力を持つロストワックス鋳造メーカー5社を紹介します。
大手の量産メーカーから、試作・小ロット対応に強い企業まで、それぞれの特徴を比較します。
妙中鉱業株式会社|国内最大級のロストワックス専業メーカー
妙中鉱業株式会社は、1940年創業の老舗企業で、1954年に設立されました。
千葉県茂原市に本社・工場を構え、従業員は約220名。
モリブデンなどのレアメタル精錬事業をはじめ、化学品や試薬の製造、そして精密鋳造(ロストワックス)を手掛ける総合メーカーです。
精密鋳造部門では、金型製作から製品完成までの一貫体制を構築しており、
複雑形状の部品を高精度に一体成形する技術で産業機械・医療機器・車両部品など多分野に供給しています。
海外協力工場との連携により、小ロットから大量生産まで柔軟に対応できる点も特徴です。
対応材質はステンレス・鉄・銅・アルミなど多岐にわたり、品質管理はISO9001およびPED認証に準拠。
国内外のネットワークを活かし、安定した品質と柔軟な対応力を両立しています。
株式会社キャステム|MIMとロストワックスを両立する精密鋳造メーカー
株式会社キャステムは、1970年創業、広島県福山市に本社を置く精密金属部品メーカーです。
主力はロストワックス鋳造とMIM(金属粉末射出成形)の2本柱で、自動車・航空・医療・産業機械など幅広い業界に部品を供給しています。
金型製作から素形材、機械加工まで一貫生産が可能で、協力会社と連携して表面処理や組立まで対応。
小ロット試作から大量生産までスムーズに移行できる体制を持っています。
また、3Dプリンタを活用した**金型レス鋳造「デジタルキャスト」**を展開しており、
数十個以下の試作でも短納期・低コストで製品化できるのが大きな特徴です。
対応材質は炭素鋼・ステンレス・工具鋼・アルミ・銅・コバルト合金など100種類以上。
国内外8拠点に生産拠点を持ち、ISO9001・ISO14001・ISO13485を取得。
グローバル規模で高品質な精密部品を提供しています。
株式会社ハヤカワロストワックス|真空溶解炉による高難度材鋳造に強い
株式会社ハヤカワロストワックスは、1988年創業のロストワックス専門メーカーです。
新潟県長岡市に本社・工場を構え、航空・防衛・発電タービン向けの精密鋳造品で高い評価を得ています。
金型設計から鋳造・熱処理・仕上げまでの一貫体制を持ち、
真空溶解炉を2基保有している点が大きな特徴です。
これにより、ニッケル基・コバルト基など酸化しやすい高耐熱合金の鋳造が可能となっています。
また、3Dプリンタを用いた樹脂模型による金型レス試作にも対応しており、
試作コストやリードタイムの大幅な短縮を実現しています。
対応材質はNi基合金・Co基合金・ステンレス各種・耐熱鋼・炭素鋼・アルミ・銅合金など。
品質保証面ではJIS Q 9100(航空宇宙規格)・ISO9001・ISO14001・Nadcap認証を取得し、
X線検査・蛍光浸透探傷などの非破壊検査設備を完備しています。
キングパーツ株式会社|国内一貫体制による高品質・大量生産メーカー
キングパーツ株式会社は、1964年設立のロストワックス専業メーカーです。
広島県福山市に本社・工場を構え、従業員317名。国内最大級の生産体制を誇ります。
一般機械、電子機器、医療機器、車両、航空・防衛分野など幅広い業界に精密鋳造部品を供給。
金型製作から鋳造・機械加工・熱処理・表面処理までを自社内で完結する一貫体制が強みです。
最少5個から生産可能で、月産42万個規模の大量生産にも対応。
試作初回を最短3週間で納品した実績もあります。
対応材質は鉄・ステンレス・耐熱鋼・アルミ合金・銅合金など100種以上。
真空鋳造炉を備え、インコネルやステライトなどの耐熱合金にも対応しています。
品質保証体制も万全で、3次元測定機・X線透視・浸透探傷・材料分析装置などを完備。
全数検査や破壊試験も実施し、高い信頼性を維持しています。
株式会社武杉製作所|小ロット・チタン材・MIMにも対応する中小メーカー
株式会社武杉製作所は、1968年設立の神奈川県横浜市に拠点を置く精密金属加工メーカーです。
多品種少量の部品製造を得意とし、交通インフラ・電装機器・産業機械・建築金物など多様な業界に部品を供給しています。
1個から対応可能な柔軟な生産体制が最大の特徴で、海外の大型真空炉を備えた提携工場と連携することで、チタン合金のロストワックス鋳造にも対応しています。
国内ではステンレスや炭素鋼など一般材の中小物を中心に製造し、鋳造・機械加工・検査・組立までを自社で一貫対応。
3Dプリンタ模型による金型レス試作も可能で、少量生産でも高精度・短納期を実現します。
高品質な製品提供を徹底しており、必要に応じて全数X線検査や抜取破壊試験も実施。
国内で最終検査を行うことで品質保証を確立しています。
「大手には難しい小ロット・高精度対応」を得意とする柔軟なメーカーです。
5社の比較まとめ
| 企業名 | 特徴 | 得意分野 | 対応ロット | 主な材質 |
|---|---|---|---|---|
| 妙中鉱業株式会社 | 老舗・総合メーカー | 医療・産業機械 | 小~大ロット | 鉄・ステンレス・銅・アルミ |
| 株式会社キャステム | MIM+ロストワックス | 自動車・航空・医療 | 少量~大量 | 鉄・SUS・工具鋼・非鉄金属 |
| 株式会社ハヤカワロストワックス | 真空溶解炉保有 | 航空・防衛・エネルギー | 少~中ロット | Ni基・Co基・SUS・耐熱合金 |
| キングパーツ株式会社 | 大規模国内一貫体制 | 車両・医療・防衛 | 5個~万単位 | 鉄・SUS・耐熱鋼・Ni/Co合金 |
| 株式会社武杉製作所 | 小ロット対応・チタン対応・MIMにも対応 | 試作・製品開発・産業機械 | 小~中ロット | SUS・炭素鋼・チタン・非鉄 |
まとめ
ロストワックス鋳造メーカーには、それぞれ異なる強みがあります。
妙中鉱業やキングパーツは大量生産・安定供給に優れ、
キャステムやハヤカワロストワックスは高精度・特殊材料に強みを持ちます。
その中で、武杉製作所は下記のような独自ポジションを確立しています。
- 大手では対応しづらい簡易金型による100個からロストワックス鋳造
- 中小企業ならではの小回り・柔軟性に強み
- 真空精密鋳造炉が必要となるチタンにも対応可能
- 金属製品の試作開発や小ロット生産でお困りの企業に最適
少量からでも高品質なロストワックス鋳造を実現したい方は、ぜひ武杉製作所までお問い合わせください。